江東 この街あの人

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江東 この街あの人 江東区文化観光ガイドの会 会長の中尾正文さん

世界の新たな才能の紹介から、参加型企画展まで。
大人も子どもも楽しめる幅広い展示で、現代美術をより身近な存在に。

撮影 上野則宏

東京都現代美術館はどのような美術館なのでしょうか。
都立木場公園の北地区に1995(平成7)年にオープンした、現代美術が専門の公立美術館です。当館で扱う現代美術の範囲としては、1945(昭和20)年以降につくられたもの、つまり、戦後の美術がメインになります。来年(2015年)の3月18日には開館20周年を迎え、さまざまな記念イベントが今年3月から1年間にわたり順次開催されます。
どのような展覧会が行われていますか。
柱の一つは、常設展示『MOTコレクション』です。MOT(モット)とは、東京都現代美術館の略で、約4,700点に及ぶ収蔵品を中心に、テーマを設定し、戦後・現代美術の魅力をご紹介しています。常設展は展示内容が変わらない美術館も多いのですが、当館では一定の頻度で展示替えを行っており、何度も足を運んでくださる方もいらっしゃいますね。 二つ目の柱が企画展です。現在開催されている企画展『MOTアニュアル』は1999年から行われているグループ展で、日本の若手作家による現代美術の動向をご紹介する展覧会です。これまでに、ドイツの現代美術作家『トーマス・デマンド展』(2012年)、メキシコ在住のアーティスト『フランシス・アリス展』(2013年)のように、世界に広く知られながら、日本では作品をまとめて目にすることのできなかった作家の個展も積極的に行ってきました。こうした世界の才能を日本でご紹介するのも、当館の役割のひとつだと考えています。

吉田夏奈 展示風景
撮影:伊奈英次

「現代美術」というと、難しそうなイメージを持つ人もいると思います。どのような方が来られていますか。
アートに興味のある方はもちろんですが、そうでない方も多くいらっしゃっていますね。特に、毎年夏には親子で楽しめる展覧会を行っていて、大勢の方々にお楽しみいただいています。 たとえば、2013年に開催された展覧会『オバケとパンツとお星さま』では、子どもが自由に作品に親しむことができるように、実際に触ったり、遊んだりできるようにしました。壁に吊るされた布、つけひげなどを選んで身につけ、変身できるコーナーもあり、家族みんなで楽しんでいただきました。オリジナル衣装を制作できるコーナーでは、子どもだけではなく、むしろお父さんとお母さんの方が夢中になっている姿も見られました。

夏のワークショップ「オバケのかかしとパンツのかかし」より
撮影:後藤武浩

子ども連れの親子が一緒に楽しめる企画というのは、素晴らしい試みですね。
小さな子どもがいて、美術館に行きたくてもなかなか足を運べないといった方も少なくありません。一般的に美術館では「走らない」「触らない」「騒がない」というルールがあり、それを守るのは、小さな子どもにとって容易ではありません。その意味でも、子ども連れの方ものびのびできる展覧会ということで、多くの方にご満足いただけたのでしょう。
家族向けの展覧会は、この夏も予定されているのでしょうか。
もちろんです。家族でお楽しみいただける、夏休み向けの展覧会を準備しています。夏はお祭りや花火大会なども多く、おでかけしたくなる季節。ぜひ、美術館にもぜひ足を運んでいただきたいですね。

伝統文化が息づく江東区ならではの企画展示も。
近隣の学校への出前授業やお祭りへの参加など、地元の人たちとの連携も大切にしていきたい。

「お祭り」という言葉が出ましたが、江東区といえば、江戸三大祭のひとつに数えられる「深川八幡祭」をはじめ、多くのお祭りが行われるなど、現在も伝統文化を守り続けているエリアとして知られています。その江東区に立地する美術館らしい展覧会などもあるのでしょうか。
当館は都の施設であるとともに、伝統文化の息づく江東区に立地しています。そこでこの秋、狂言師の野村萬斎さんを総合アドバイザーにお迎えし、伝統芸能から現代にわたる多様な身体表現やパフォーマンスと、現代アートとのコラボレーションによる展覧会を開催する運びとなりました。
地元と連携した取り組みも行われているのでしょうか。
地元の方々との連携も大切だと思っています。企画展に出展している作家が近所の小学校を訪ね、生徒さんたちと一緒に作品を作るという試みを行ったことがあります。また、深川八幡祭の時には御神輿の御旅所(おたびしょ:休憩所)ができ、私たち美術館スタッフも、バケツで水を御神輿に掛けさせていただきました。仕事そっちのけで、とは言いにくいのですが(笑)、副館長をはじめ、みんなとても盛り上がりました。地元の方々とともに、美術館もさらに発展していければいいと考えています。
展覧会以外にも取り組んでいる活動はありますか。
教育普及プログラムでは、さまざまなワークショップを行い、美術館内でのアーティストトークや講演会、子どもや親子のための美術鑑賞ツアーなども開催しています。また、アーティストが学校で授業を行う「出前授業」も好評です。 他にも、江東区内や東京都内の学校から先生と生徒さんにご来館いただき、美術鑑賞を体験していただいています。修学旅行生の皆様が上京された際に、当館に立ち寄られることも少なくありません。 『MOTコレクション』展では、ボランティアのガイドスタッフの方たちによる解説も毎日行っています。美術好きで勉強熱心なボランティアの方たちによる説明は、一般のお客様の目線に近く、わかりやすいと評判です。
展覧会場の他にも、東京都現代美術館としてのおすすめはありますか。
ミュージアムショップは、展覧会に関連したオリジナルグッズやカタログをはじめ、他ではなかなかお目にかかれない、多彩なラインアップが魅力で、プレゼント選びに迷った時にもおすすめです。また、味はもちろん、時間がゆったりと流れるレストランやカフェも評判です。 さらに、約20万冊の美術関連の図書や雑誌を揃えた美術図書室も自慢です。展覧会で気になったアーティストについて調べたり、美術史をひも解いたり。無料で閲覧でき、ウェブサイトから蔵書検索もできるので気軽にご利用ください。
これからの抱負と皆様へのメッセージをお聞かせください。
現代美術は難しくありません。まずは一度、足を運んでください。美術史や作家のバックボーンなどの知識があるほうが深く味わえるかもしれませんが、予備知識がなくても楽しめるのが美術の魅力。ウェブサイトやポスター、チラシなどで展覧会のスケジュールを見て、ちょっとでも興味のある催しがあれば、気軽にお越しください。
(取材日:2014年3月12日)
江東 この街あの人
東京都現代美術館 事業推進課企画係長学芸員・加藤弘子さん
加藤弘子(かとう・ひろこ)さん
東京都現代美術館 事業推進課 企画係長 学芸員
東京都現代美術館のオープン以来、学芸員として数多くの企画展・イベントなどを担当。目下、美術館周辺のカフェやお店の情報を収集して、趣味と実益を兼ねた「おいしいもの」マップを作ろうとしている。プレゼント選びに同館のミュージアムショップを利用することも。
http://www.mot-art-museum.jp

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