【江東 この街あの人】東京都夢の島熱帯植物館 館長 榎本 浩さん

2018年に開館30周年を迎える夢の島熱帯植物館は、まるで都会の中のジャングル。
熱帯・亜熱帯植物の不思議や面白さを伝える榎本館長に、植物館を案内していただきました。

公園造園の現場監督から植物館の館長さんに。

【江東 この街あの人】東京都夢の島熱帯植物館 館長 榎本 浩さん 3つのドームには熱帯・亜熱帯の植物が約900種類
3つのドームには熱帯・亜熱帯の植物が約900種類

いつ来ても南国ムードいっぱいの植物館ですね。
それにとっても癒されます。

 夢の島熱帯植物館では、気温が高く雨の多い熱帯雨林をモデルにした3つのドーム型の温室に、熱帯・亜熱帯の植物約900種を展示しています。東京都で唯一の熱帯地方でもある小笠原の固有種35種もあり、なかには絶滅危惧種と呼ばれる植物もあるんですよ。
 熱帯の気候を維持するため、もっとも苦労するのは温室の室温管理です。だいたい20~22℃に、湿度は60~70%に保っています。寒くなると植物の傷みが早くなるので、いちばん気を遣う部分ですね。

施設の暖房に大きな特徴があると聞きましたが。

 室温を保つためには莫大なエネルギーが必要となりますが、施設の暖房などは隣接する新江東清掃工場のごみ焼却余熱でまかなっています。これは当館の大きな特徴のひとつですね。焼却熱は約120℃の高温水となって当館まで運ばれ、熱交換をして熱だけもらうわけです。温室の周囲にも温水配管があり、その中に温水を流すことで暖めています。
 1年中、温度と湿度は保っていますが、そんな中でも四季に応じて育つ植物、育たない植物があります。温室では見ごろの植物も紹介しています。

榎本さんはもともと植物がご専門ですか?

 私がここに来たのは2005年。日比谷アメニスが指定管理者となった時からで、夢の島公園とあわせて管理・運営しています。2010年からは館長として施設全体のプロデュースのほか、都との打ち合わせやお客様対応もしています。日比谷アメニスは造園土木、おもに公園の造成・整備、建物の壁面緑化や屋上緑化などを手掛ける会社で、私も以前は公園工事を監督管理する立場、いわゆる現場監督だったんです。

これまでも植物に関わるお仕事だったんですね。
初めてここに来た時はどんな印象を持ちましたか?

 まるでジャングル(笑)! 植物の迫力に圧倒されました。今よりもっと鬱蒼としていたんですよ。でも、ジャングルは完全に密閉された場所ではなく風通しは良いはずなので、植物にある程度の隙間を与えないと育たないのではないかと。もっとジャングルらしくしようという話もありましたが、前館長と話し合って少し間引いてやると、植物ひとつひとつが元気になりましたね。

3つのドーム型温室には巨大な熱帯植物から小笠原の固有種まで。

【江東 この街あの人】東京都夢の島熱帯植物館 館長 榎本 浩さん Aドーム内は滝が流れ、巨大な水性植物が葉を広げる
Aドーム内は滝が流れ、巨大な水性植物が葉を広げる

温室ではどんな植物を展示しているんですか?

 実際に温室をご案内しましょう。3つの温室には壁があるわけではなく、それぞれテーマにあわせた展示をしています。入口を入ってすぐのAドームは「熱帯の水辺」がテーマで池と滝があります。巨大な水生植物の葉が広がり、池のまわりには木性シダが生い茂っています。熱帯には比較的大きな植物が多いんです。気候のせいもありますが、ジャングルに生い茂るので少しでも陽の光を浴びようと、そういった努力も進化の中にあるのだと思います。

【江東 この街あの人】東京都夢の島熱帯植物館 館長 榎本 浩さん コーヒーの実の中は白く、口に含んでみると甘味とかすかなコーヒーの香り
コーヒーの実の中は白く、口に含んでみると甘味とかすかなコーヒーの香り

 トンネルを抜けるとBドームで、マンゴーやバナナ、パイナップル、カカオ、コーヒーなど実のなる木を展示しています。バニラやカカオはどんなふうに実がなっているのか、また実はどんな形をしているか知っていますか? 熱帯植物には意外と身近なものも多いので、そんな発見を楽しんでいただけると思います。中央に立つ天井に届くほどの大きな木は「ダイオウヤシ」といって24m程あります。ヤシは剪定をして頭を止めると死んでしまうので、そろそろ植物館で育てている他のヤシと世代交代を考えています。
 最後のCドームは小笠原とマダガスカルの植物が中心です。小笠原の「タコノキ」「オヤシ」「ムニンノボタン」など、なかなか見ることができない植物は必見です。東京から小笠原は距離にしたら約1,000km、九州と同じくらいの距離ですよね。それだけ離れた地の植物が、ここなら15分もあれば見られるわけです。小笠原からアフリカまで、世界へ行くことなく見学できるのも、この植物館の魅力ではないでしょうか。

様々な展示やイベントで植物館をもっと楽しく!

榎本さんが展示をするうえで大切にしていることを教えてください。

 植物だけしか存在しない世界はないと思っています。植物があれば文化もあり、人もいて、生活圏があって、動物もいる。なるべく植物と何かをかけ合わせた展示を心がけています。例えば、夏と冬に行なう夜間開館では、芸術家の作品と植物を融合させた展示を行ないました。植物をまったく知らない人には、なかなか植物館まで足を運んでもらえませんからね。植物とは違う目的を持って来た人に、新たな植物という趣味の世界があると知ってもらえれば嬉しいですね。
 また、障がいのある方が植物館を楽しめないのは非常にもったいないと思っているんです。とくに目の不自由な方が、どうしたら植物館を楽しめるかということも検証しているところです。

楽しそうなイベントも多いですね。
イベントは親子連れが中心ですか?

 イベントは年間120本ほど行なっています。季節にあわせたものからフラワーアレンジメント教室、コンサートまで、イベントによって参加者の年齢も幅広いですね。毎年開催している「夢の島 こども&おとな ラン大賞」は、クレイ粘土で創造のランを作って展示するイベントですが、この時は江東区や中央区の小学校6~7カ所へ出張授業にも行きます。想像力を育む勉強とクレイ粘土4色を混ぜて発色させる勉強などを指導しているんですよ。時間内に造るということも子ども達は学んでいます。

【江東 この街あの人】東京都夢の島熱帯植物館 館長 榎本 浩さん カフェコーナーでは「ロコモコ」や「スパムライス」などオリジナルメニューが並ぶ
カフェコーナーでは「ロコモコ」や「スパムライス」などオリジナルメニューが並ぶ

最後に今後の抱負や目標をお願いします。

 夢の島公園に遊びに来る方は多くても、その先に熱帯植物館があると知らない人が多いんです。植物はとても面白いものだと、人間に関わり深いものだと知ってもらえたら嬉しいですね。
 実は日本には植物館が100施設以上あります。それぞれに特徴が異なり、力を入れているものも違います。今後は、植物館の業界全体の底上げにも取り組んでいけたらと思っています。
(取材日:2017年12月20日)

江東 この街あの人

東京都夢の島熱帯植物館 館長 榎本 浩さん

1966年生まれ。日比谷アメニスで公園の造成・整備などの管理監督を行なう緑と施工の専門家。2005年に指定管理者制度により夢の島熱帯植物館の副館長、2010年に館長に就任。好きな熱帯植物はバニラやカカオなどの実のなる木。

東京都夢の島熱帯植物館
東京都江東区夢の島2-1-2
TEL:03-3522-0281
東京夢の島熱帯植物館のウェブサイト http://www.yumenoshima.jp/