富岡八幡宮 権禰宜・松木伸也さん

富岡八幡宮 権禰宜・松木伸也さん

江戸時代の富岡八幡宮は、信仰と娯楽の中心。アミューズメントパークの側面がありました。

富岡八幡宮の歴史についてお聞かせいただけますか。

富岡八幡宮の起源は、江戸時代初期の1627(寛永4)年にさかのぼります。御信託により、永代島(えいたいじま)と呼ばれていたこの地に、創建されました。

永代島ということは、神社の周りは昔、海だったということですか。

ええ、その通りです。海に囲まれた小島であった永代島は、風光明媚で知られ、江戸城、富士山、筑波山、さらに房総半島まで一望できたと伝えられています。その後、周辺を埋め立て、社地と氏子の居住地を開き、深川が発展するための礎を築きました。

富岡八幡宮は今も大変な賑わいを見せていますが、江戸時代にはどのような存在だったのでしょうか。

現在も大勢の方が参拝に訪れますが、当時はさらに存在感があったかもしれません。お参りができるだけでなく、境内にさまざまなお店があり、お芝居や相撲なども行われていました。人々の信仰心を満たし、さらに一大娯楽スポットとしても親しまれていました。アミューズメントパークのような側面もあったのでしょう。境内には当時、江戸を代表する料理屋「二軒茶屋」があるなどにぎわいを見せていたようです。幸いにして、富岡八幡宮の周辺は今でも江戸情緒が感じられますね。

相撲の話が出ましたが、富岡八幡宮では横綱の土俵入りも行われていますよね。

富岡八幡宮は相撲の発祥の地でもあります。江戸時代、相撲は京・大阪で始められましたが、大にぎわいをみせる一方、けんかなどのトラブルも絶えなかったことから、江戸幕府はたびたび禁止令を出しました。しかし、そのうち規制が緩み、1684(貞享元)年、富岡八幡宮の境内で江戸勧進相撲を行うことを寺社奉行が許可しました。江戸勧進相撲発祥の地であることから、新しい横綱が誕生すると、富岡八幡宮の境内で土俵入りが奉納されます。境内の横綱力士碑には、江戸時代前期に活躍した初代横綱・明石志賀之助を含む、歴代横綱の名が刻まれているのでぜひともご覧ください。

お祭りは地元の人たちと一致団結して作り上げられるもの。
参加するすべての方が楽しめるのは、秩序があるからこそ。

相撲の他に、名物と言えるものはありますか。

お祭りですね。富岡八幡宮の例祭は「深川八幡祭り」ともいわれ、江戸三大祭りの一つに数えられる伝統行事です。深川八幡祭りの代名詞ともいえる神輿の渡御(とぎょ)は1643(寛永20)年に始まり、8月15日を中心に行われています。本祭の年には、深川と霊岸島(中央区新川)にある氏子の各町から集まった、50基以上の町神輿(前回は平泉の神輿を加えた54基)が約8kmの行程を練り歩きます。

深川八幡祭りの「本祭(ほんまつり)」は何年に一度でしょうか。

正しくは「富岡八幡宮例祭」といいますが、本祭は3年に一度の開催。前回は東日本大震災の影響で1年遅れて行われたため、今夏(2014年夏)は2年ぶりの本祭ということになります。

もともと、本祭は3年に一度の開催だったでしょうか。

2年に一度という時代もありましたが、昭和30年代以降は3年に一度行われるようになりました。現在、50基以上の町神輿が「わっしょい、わっしょい!」の掛け声とともに担がれていますが、明治時代の途中までは御本社神輿と山車(だし)の巡行が中心だったようです。その後、次第に町神輿が登場するようになり、町々の御神輿が巡行する、町神輿連合渡御が行われるようになったとされています。町神輿の連合渡御は深川が先駆けではないかと考えています。

深川八幡祭りの魅力とは何ですか。

たくさんありますが、その一つは、50基以上の御神輿が練り歩き。担ぎ手の皆さんだけでも総勢約3万人、観客は30万人以上もいらっしゃるのに、大きなトラブルもなく行われることでしょうか。御神輿と御神輿の間がほぼ等間隔のまま、最後まで渡御が行われるなど、秩序が保たれていること。普段から各町の神輿総代といわれる代表の方々が話し合いを行い、また、各町の皆さんも協調性があり、みんなで良いお祭りにしようと一致団結しています。深川八幡祭りは「水掛け祭り」とも呼ばれ、担ぎ手だけでなく、沿道から水を掛けてくださる方々も一緒になって楽しめる、参加性のあるお祭りであることも大きな魅力だと思います。

これからの抱負と皆様へのメッセージをお聞かせください。

今年(2014年)は、深川八幡祭りの本祭の年。氏子の皆さん、各町会の方々をはじめ、数多くの方々の協力をいただき、本祭が行われる予定です。また、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020(平成32)年は、3年に一度の本祭りが行われる年でもあります。2020年の夏はスポーツの祭典「オリンピック」と、江戸三大祭りのひとつ「富岡八幡祭り」が開催され、これまでにない盛り上がりが期待されます。ここ深川をはじめとする江東区へも、日本全国だけでなく、世界各国から観光客の方々がいらっしゃるでしょう。外国語の案内板を充実させるなど、富岡八幡宮でも皆さんをお迎えする準備を進めたいと思っています。
(取材日:2014年3月14日)

江東 この街あの人

富岡八幡宮 権禰宜・松木伸也さん

松木伸也(まつき・しんや)さん
富岡八幡宮(深川八幡)権禰宜(ごんねぎ)
子供の頃から神社や歴史に興味を持ち、大学の神道学科で学んだ後、神職に就く。富岡八幡宮では広報も担当し、地域外の方へのPR活動も行っている。富岡八幡宮境内で特におすすめなのは、日本一の大きさと豪華さを誇る二基の御本社神輿。