【江東 この街あの人】NPO法人 本所深川 理事・事務局長 吉田 雅子さん

好奇心旺盛な深川っ子が仕掛ける
楽しく、面白い、本所深川の魅力

生まれ育った深川の町おこしがしたい。

NPO法人本所深川について教えてください。

 NPO法人本所深川は平成17年に誕生しました。設立時のメンバーは、地域に詳しい民生委員の方が多かったですね。私は設立当初から事業の企画や広報を担当しています。
 本所深川は、江戸時代から今日に至るまで多くの歴史、文化、伝統を継承しているまちです。それらの観光資源を活かして「まちを知る・聞く・味わう」をテーマに様々な事業を展開しています。例えば、まちあるきと“江戸の食”を組み合わせたイベント。また、かつては掘割が多く存在し、現在も川として残る地域性から、水辺を組み合わせた事業なども行なっています。本所深川という土地が持つ歴史・文化・伝統の中から埋もれている宝物を発見し、外部からの集客やリピートを促すような企画を作成し、地域の活性化につなげたいと考えています。

【江東 この街あの人】NPO法人 本所深川 理事・事務局長 吉田 雅子さん 水辺とまちあるきを組み合わせたイベントも多く開催
水辺とまちあるきを組み合わせたイベントも多く開催

設立にはどんな思いがあったのでしょうか?

 実家は江東区常盤二丁目で明治27年に創業した四代続く本屋で、深川小学校を卒業しました。店は清澄通りにあったのですが、昔は大通りにも商店がぎっしりと並び賑わっていました。しかし、昭和58年に店を閉じました。その後、江東区森下文化センターがオープンし館内に大きな図書室が出来たので図書を管理する司書として非常勤職員で勤め始めたんです。もともと地元ですから地域への思い入れはあったのですが、文化センターで地域密着の仕事をしたこと、また中学から大学は地域外の学校に通ったこともあり、地域への思いを強く抱くようになったんです。とくに生まれ育った深川北部の高橋、森下、新大橋の町おこしをしたいと思いました。
 でも、江戸という視点でまちを見ると、深川の歴史や文化は本所地域(墨田区の一部)とつながっていることが多いんです。そこで、深川だけでなく本所も含めた縦のラインでの町おこしを考えました。

江戸の食を地域活性化の資源に活用。

設立後はどんな活動をされましたか?

 まず行なったのが、地域を訪れた方にまちを知ってもらうための「まち案内人(ガイド)」養成です。当時、江東区にまだ観光ガイドが存在しない時代で、この活動は江東区文化観光ガイドの元になりました。私自身も設立翌年から2年半かけて、東京都の観光プランナー育成事業に参加して勉強しながら、他区の方々と地域連携ができるよう交流を深めました。この時の出会いが縁となり、江東・墨田・港区のガイドをつなげ、船を使った「平成忠臣蔵」事業も行ないました。
 この他にも、この地域に縁のある松尾芭蕉や長谷川平蔵をテーマにしたまちあるきイベント、江戸の食の再現など、数多くの事業を展開しています。本所深川ではないのですが、大島地区の町会長さんから「旧中川で町おこしが出来ないか」と相談を受けたこともあります。江戸時代は大島でそら豆を栽培していたという歴史を突き止め、5年前に「大島旧中川そらまめ祭り」を仕掛け、現在も毎年5月に開催しています。旧中川の河川敷でそら豆を栽培できないため、地域の学校にお願いし、プランターで育ててもらっています。

【江東 この街あの人】NPO法人 本所深川 理事・事務局長 吉田 雅子さん 小説『鬼平犯科帳』の献立を再現した「平蔵御膳」
小説『鬼平犯科帳』の献立を再現した「平蔵御膳」

昨年は「平蔵御膳」を開発され大きな話題になりました。 

 おかげさまで東京新聞が大きく取り上げてくださり、まち歩きと「平蔵御膳」を組み合わせたイベント「鬼の平蔵・見回り帖と平蔵御膳」は、お断りする程の申し込みがありました。「平蔵御膳」は小説『鬼平犯科帳』に登場する料理の中から、江戸時代の料理に倣いながら再現した料理で、地元の和食店の料理長が再現してくれました。今年4月11日にも、船遊覧と「平蔵御膳」が楽しめるイベントを企画しています。そこでは小説の中から探した春の食材を使って、料理を披露できればと考えています。
 これまでも『鬼平犯科帳』に登場する「平蔵好みの一本うどん」を麺類組合と共同開発したり、本所深川で発祥(両国の華屋与平、安宅の松の寿司)した江戸握り寿司「大川握早漬」を地域の寿司店やミツカンにご協力いただき開発しました。どちらも商標登録し、いくつかの店舗でメニューとなっています。

【江東 この街あの人】NPO法人 本所深川 理事・事務局長 吉田 雅子さん 江戸時代の握り寿司を再現した「大川握早漬」は、地元の寿司店やミツカンと共同開発
江戸時代の握り寿司を再現した「大川握早漬」は、地元の寿司店やミツカンと共同開発

最後に今後の抱負や江東区の魅力をお願いします。

 江東区は大きく分けると深川地区、城東地区、臨海部があり、それぞれの顔があります。なかでも深川は江戸時代から積み上げてきた歴史や文化、伝統もありますし、紹介したい地域資源も豊富です。
今後は学生を中心にガイドの育成を行なっていきたいですね。若い人の力はずっと続きますから。地域を楽しい、面白いと思ってもらえれば、先の発展にもつながります。いま求められているのは歴史的な案内ばかりではなく「ここのお店の何が美味しい」などと丸ごと地域をガイドできる“まちの案内人”です。
 私自身、深川で生まれ育ったことから、地域の人々や歴史もよく分かっています。新しい展開やアイデアで、このまちの魅力をもっと面白く味付けしていきたいですね。
(2018年2月21日取材)

江東 この街あの人

NPO法人本所深川 理事・事務局長 吉田 雅子さん

1944年生まれ。江東区常盤二丁目で四代続く書店の娘として生まれ育ち、平成17年にNPO法人「本所深川」を設立。理事・事務局長として事業の企画や広報を行なう。「楽しむ和文化・体験する和ごころ」をテーマに「くらし彩生活文化塾」を主宰。花作家や運命カウンセラーとしても活躍。

NPO法人本所深川のウェブサイト https://www.honfu