【江東 この街あの人】亀戸9丁目町会 会長 鴇田 慶三さん

豊かな緑に囲まれた「旧中川」は、まちのふれあい空間
アジサイ祭りや灯籠流しに奮闘する町会長さん

工場地帯から住宅街に移り変わった亀戸9丁目

亀戸9丁目はどんなまちですか。

 江東区の北東、旧中川沿いにあります。現在、町会員は2000世帯です。かつては工場地帯で日立製作所や田原製作所、鉄工所、コークス会社などもありました。昔は水運が中心でしたから旧中川沿いに工場が建ち、製造したものは船に積んで各地に運ばれました。しかし工場は次々と移転し、その跡地にはマンションが建っています。
 旧中川の河川敷はきれいに整備され、平成6年には亀戸9丁目と江戸川区平井を結ぶ人道橋「ふれあい橋」が完成しました。これがきっかけとなり、毎年8月15日に平井地区亀戸地区合同で「旧中川灯籠流し」を行なっています。また、毎年6月には「旧中川アジサイ祭り」を開催し年々賑わっています。町内には浅間神社もあり、昨年ご鎮座490年を迎えました。

鴇田さんは生まれも育ちも亀戸ですか。

 生まれは中央区月島で、戦後になって小学1年生から亀戸9丁目です。父は梱包材料の木箱を作る仕事をしていました。しかし、時代とともに梱包材料も木箱から段ボールになったことから跡は継がず、町内にあった水門扉メーカーの田原製作所に就職しました。田原製作所は大正7年創業の水門メーカーで、江東区内では辰巳水門や扇橋閘門などのゲートを造りました。私は30数年勤めましたが「脱ダム宣言」などがあり、そんなことも影響し水門の受注が少なくなり、平成17年に会社が解散してしまったんです。
 解散時には長年お世話になった町会に恩返しをしようと、亀戸9丁目町会の全1300世帯に1千万円かけて防災グッズを寄付し、旧中川沿いの社屋跡地に記念碑を建立しました。当時、新聞にも大きく取り上げられたんですよ。
 とても町会に協力的な会社でしたね。町会役員も出していただきたいとの依頼があり、私が地元ということもあり引き受けました。町会長になって今年でちょうど9年になりますが、町会には35年ほど関わっています。

アジサイに灯籠流し、多彩な魅力を誇る旧中川

【江東 この街あの人】亀戸9丁目町会 会長 鴇田 慶三さん 毎年8月15日に開催している「旧中川灯籠流し」。昨年は2400個の灯りが川面に浮かんだ
毎年8月15日に開催している「旧中川灯籠流し」。昨年は2400個の灯りが川面に浮かんだ

旧中川灯籠流し」はとても幻想的な行事ですね。

 昭和20年3月10日の東京大空襲の犠牲者を追悼するための行事で、今年で灯籠流しを始めて20年になります。江戸川区平井と一緒に行なっていますが、他区と一緒に行なう行事は珍しいかもしれません。
 東京大空襲では旧中川で3000人も亡くなりました。その大部分は平井の方々で、亀戸9丁目は風向きの関係で焼けませんでした。平井東自治会長さんから一緒に灯籠流しを行ないませんかと提案があり、旧中川を挟んでいる住民同士ですから、お手伝いしましょうということになりました。当時から宗教とは関係なく、民間で行なっているのも特徴の一つですね。
 式典は合同で行ないますが、灯籠流しは旧中川の亀戸側と平井側に別れて行なっています。参加者には組み立て式の灯籠を一つ500円で購入していただき、それぞれが灯籠に思い思いの言葉や絵を描き、亀戸側は「ふれあい橋」の下から流しています。

「旧中川アジサイ祭り」のアジサイは町会で植えたものですか。

 以前の河川敷は雑草が生い茂っているだけで、何もなかったんです。そこで、近隣の亀戸7丁目北部・南部町会と亀戸8丁目町会の町会長さんと一緒に、山﨑孝明江東区長に「河川敷にアジサイを植えてほしい」とお願いしましてね。区長はすぐ河川敷に来てくださって、我々と一緒に河川敷を歩いたんです。すると区長が「植えるのは良いけど、管理は町会でお願いしますよ」とのことでした。植物に詳しくないから、この時は管理なんて簡単なものだと考えていたのですが、この管理が大変だったんです(笑)。
 そして平成25年3月に江東区が北米産のアナベルやガクアジサイ、ヤマアジサイ、西洋アジサイなど1800株のアジサイを植樹してくれました。管理はボランティアを集い、現在76人が一年を通して雑草刈りをはじめ剪定作業、散水作業などを月2回行なっています。アジサイを植えてもらった嬉しさもあり、その年の6月から「旧中川アジサイ祭り」を開催しています。

【江東 この街あの人】亀戸9丁目町会 会長 鴇田 慶三さん 「旧中川アジサイ祭り」で人気の「江東区運河一周クルーズ」「
「旧中川アジサイ祭り」で人気の「江東区運河一周クルーズ」「

「旧中川アジサイ祭り」では、どんなイベントを開催していますか。

 「亀戸カヌー万歩倶楽部」の協力で、大人から子どもまで楽しめるカヌー体験や、亀戸中央公園防災船着場では「江東区運河一周クルーズ」も運航しています。北十間側、横十間川、小名木川、旧中川を約1時間で一周でき、昼間とナイトクルーズ全7便が運航していますが、毎年すべて満席となる盛況ぶりです。また、当町会の子ども会や近隣町会が焼きそば、フランクフルト、唐揚げ、かき氷などの屋台を出して盛り上げています。
 開催して良かったと思うのは、みなさんに喜んでもらえ、旧中川をよく知ってもらえることです。旧中川は江東区の端にあるから、よく知らない人も多いようで、祭り前は会場までのアクセスの問い合わせが結構あるんですよ。

【江東 この街あの人】亀戸9丁目町会 会長 鴇田 慶三さん 「ふれあい橋」は鴇田さんが勤めていた田原製作所製。旧中川で実施されている行事にあわせた多彩なライトアップは必見「
「ふれあい橋」は鴇田さんが勤めていた田原製作所製。旧中川で実施されている行事にあわせた多彩なライトアップは必見「

旧中川はとても魅力的な場所ですね。

 川と河川敷を隔てる柵がないため開放的で、川がとても近くに感じられます。区内の川の多くはコンクリート護岸ですが、ここは土ですからね。そういった面では恵まれていると思います。流れがおだやかなので、カヌーなど水辺のレクリエーションを楽しむこともできます。
 ただ、このおだやかな風景は荒川と旧中川を結ぶ荒川ロックゲートと小名木川の扇橋閘門のおかげです。私は旧中川で育ったといったらおかしいですが、子どもの頃からよく泳ぎに行きました。昔は水がきれいだったから魚がたくさんいて、ウナギも群れになって泳いでいることもあったんですよ。
 今は、旧中川沿いは江東区の亀戸景観重点地区にも指定され、スカイツリーがよく見える素晴らしい景色です。また、「ふれあい橋」のライトアップは多彩なイルミネーションで橋を彩っています。今春には「ふれあい橋」と「江東新橋」の間にLED灯を22基設置するので、今までに以上に夜景を楽しんでもらえると思います。
(2018年2月20日取材)

江東 この街あの人

亀戸9丁目町会 会長 鴇田 慶三さん

1939年生まれ。中央区月島で生まれ、戦後から江東区亀戸9丁目へ。学校卒業後は同町内にあった田原製作所に平成17年まで勤務。平成21年より亀戸9丁目町会長に就任。亀戸町会連合町会副会長、亀戸景観まちづくりの会副会長も務める。