【江東 この街あの人】 『伊藤ウロコ』専務取締役 伊藤 嘉奈子さん

代々続くゴム長靴専門店『伊藤ウロコ』の5代目
前職を活かし「魚がし横丁」広報としても活躍中!

日本橋、築地、そして豊洲市場へ

【江東 この街あの人】 『伊藤ウロコ』専務取締役 伊藤 嘉奈子さん 市場関係者のリクエストから誕生したオリジナルTシャツは、クオリティにもこだわっている。市場みやげとしても人気
市場関係者のリクエストから誕生したオリジナルTシャツは、クオリティにもこだわっている。市場みやげとしても人気

創業明治43年の老舗ですね。市場との関わりは長いのですか?

 築地市場よりも前の時代、日本橋に魚市場があった頃から営業しています。昔は日本橋で下駄商、履物屋だったんです。その後、昭和10年(1935)に築地市場がオープンした際に店も一緒に移転し、築地市場内で営業していました。
 ゴム長靴づくりを始めたのは2代目で、市場で働くプロが使用する長靴を基本につくっています。3代目のときに足下だけでなく、トータルコーディネートできたほうがいいだろうと、白衣や衣服も扱うようになりました。今は母(伊藤弘子さん)が4代目で、母が引退したら私が5代目ということになります。私は販売や営業のほかオリジナル商品の開発が中心です。ゴム長靴以外にも、Tシャツやトートバッグといった市場ならではのデザインやコピーも、ほとんど私が行なっています。

学校卒業後、すぐに家業に入ったのですか?

 もともと広告や出版代理店で働いていました。広告や出版の仕事は好きだったのでジレンマはありましたが、父が急に亡くなったため平成12年から家業に入ったんです。母は店で大変だったし、私はこの店があったからこそ成長できたわけですから、家業を継ぐのは当たり前と思っていました。
 でも、いざ社員として入ったら今までは甘やかされていたのだと痛感しましたね。スタッフはやさしかったけど、番頭さんはきびしかったです。一から教えてもらうというよりは、仕事ぶりを見て「そこは違うよ」とか、自分なりに頑張っても「まだ褒めたりはしないよ」と、甘えは一切ありませんでしたが、とてもためになりました。

【江東 この街あの人】 『伊藤ウロコ』専務取締役 伊藤 嘉奈子さん オリジナルのウロコ印のゴム長靴は約20種類。釣りやフィールドワーク、園芸用に一般の人にも人気が高い
オリジナルのウロコ印のゴム長靴は約20種類。釣りやフィールドワーク、園芸用に一般の人にも人気が高い

ウロコ印のゴム長靴は一般的なゴム長靴とどこが違うのでしょうか?

 用途に応じた長靴を揃えていて、デザインだけでなく用途によって靴底などのパーツや機能もすべて違います。メイン商品の「白底付大長」は一般の方にも人気ですが、この白ウロコと呼ばれているシリーズに関しては、非常に耐久性があり丈夫です。とくに靴底は魚屋さんに特化した耐油底を使用し、魚のアブラに強く滑りにくいのも特徴です。
 また、ヒールが3センチあるため底冷えも防いでくれます。通常、ヒールは軽量やコスト面で中を空洞にすることが多いのですが、うちはプロが使う大事な商売道具として考えているのでムクソールを使用しています。すり減ってもヒールが無くなるまで履いていただけます。
 他にも耐久性よりも蒸れにくさを重視したものや、市場は水を使うため寒いので防寒性に優れたものなど、うちのブランドだけで約20種類、他も含めると多いときは100種類ほど揃えています。ゴム長靴の話になると、とまらなくなってしまいますね(笑)。

市場は威勢の良い男性の職場というイメージですが、そういった面でのご苦労はありますか?

 市場は男性社会ですし、うちは経営者の母も私も女性なので苦労する面も確かにあります。私のケースでいえば体力的に男性のように頑丈ではないし、とくに長靴は重いので在庫の管理など女性だけでやるとなると大変です。そういう点では男性にはかなわないです。別に負け惜しみでも何でもなく(笑)。
 でも、男性社会でもいいと思っていて、よく「女性だから男性社会を乗り越えて頑張ろう」と言われることもあるのですが、ここはやっぱり男性の職場。競りだって男性の声で即断即決するサバサバした世界です。それは素敵だなと思っています。
 私自身は市場の中で仕事をできることが一番の喜びで、毎日が楽しいですね。市場で働けること自体に生きがいを感じています。

「魚がし横丁」ではプロとの会話を楽しんで

【江東 この街あの人】 『伊藤ウロコ』専務取締役 伊藤 嘉奈子さん 豊洲市場内「魚がし横丁」にある『伊藤ウロコ』。逆三角形のウロコ印は海と水の神様である龍神様にあやかったヘビのウロコがモチーフ
豊洲市場内「魚がし横丁」にある『伊藤ウロコ』。逆三角形のウロコ印は海と水の神様である龍神様にあやかったヘビのウロコがモチーフ

「魚がし横丁」には様々な店がありますね。横のつながりは強いんですか?

 「魚がし横丁」は市場のプロが買い物する物販専門店で、約70店舗あります。我々は市場の関連事業者というサポート業務ですので、輸送の運送業者もいれば野菜、大根のツマ、包丁などの他、ターレーの修理業など違うフロアで営業している店もあります。
 仲間意識は強いのではないかと思います。築地の頃からほとんど同じメンバーです。幼い頃から築地によく行っていたので、今もその頃から知った顔がありますし、私が知らなくても父がお世話になった方とか、「あんたのお父さんはね」なんていう話を聞くと、古いおうちに来ているような温かさを感じます。

【江東 この街あの人】 『伊藤ウロコ』専務取締役 伊藤 嘉奈子さん 営業中はお客様や電話の応対などで大忙しの中、魚がし横丁の広報の仕事もこなす
営業中はお客様や電話の応対などで大忙しの中、魚がし横丁の広報の仕事もこなす

嘉奈子さんは「魚がし横丁」の広報でもありますが、一般の人が買い物する際のコツをぜひ教えてください。

 「魚がし横丁」のほとんどの店は、早朝5時~6時前には営業しています。閉まるのはだいたい午後1時過ぎ頃から。来場するときは時間に注意してください。当店は早朝5時から14時過ぎまで営業です。早い時間帯はプロの利用が多いので、朝8時から12時頃までにお買い物を終えるスケジュールを組むといいですね。早起きは三文の徳ですから、早起きをして市場に来ていただければ、活気あふれる市場の雰囲気が楽しめるし、元気になれると思います。
 また、お店の人たちもプロを相手にしているプロですから、空いている時間を見計らって質問や相談をすれば、こたえてくれる店も多いと思います。ぜひ会話も楽しんでほしいです。

最後に江東区の印象や今後の抱負をお願いします。

 私は杉並で生まれ育ち、仕事は中央区でしたが、豊洲市場に来て江東区が好きになりつつあります。歩きまわるのが好きで清澄白河や木場公園に出向くこともあるんですよ。江東区は昔ながらのまちというイメージで、こどもが多く、便利ですよね。ここ豊洲には新しさやパワーも感じます。市場の周辺は公園で、空間があっていいなとも思います。
 世界に誇る豊洲市場の歴史は始まったばかりで、長い長い歴史はこの先も続きます。もっと地元の方々に知っていただきたいですね。うちが扱う市場グッズの中には「江東区観光キャラクターコトミちゃん」とのコラボグッズもあるんですよ。地域の人たちとのコミュニケーションを大切にしながら、一緒に頑張っていければいいなと思っています。
(2019年2月22日取材)

江東 この街あの人

『伊藤ウロコ』専務取締役 伊藤 嘉奈子さん

杉並区で生まれ育ち、広告・出版代理店に勤務の後、平成12年より家業である「有限会社伊藤ウロコ」に入社。長靴をはじめオリジナル商品の開発等を手掛ける。魚がし横丁(築地商業協同組合)副理事長・広報としても活躍。楽天的でさばさばとした性格だとか。

伊藤ウロコ
東京都江東区豊洲6-5-1 豊洲市場内 水産仲卸売場棟4F
TEL:03-6633-0464
http://www.uroko-web.com/