【江東 この街あの人】江東区文化観光ガイドの会 会長 岩渕 和恵さん

今後は渋沢栄一にも注目!
江東区の魅力を伝える最前線にいるガイドさん

歴史好きから観光ガイドの道へ

江東区文化観光ガイドの会はもうすぐ10周年になるそうですね。

 2011年に創立したので来年10周年になります。現在約120人のガイドが活躍中で、年間3000人前後の方々に江東区の観光名所などをご案内しています。江東区公認ガイドなので所定の養成講座を受講し、修了した人だけがガイドとして活動しているのですが、この4月にも十数名の修了生が会員になる予定なんですよ。
 会では12コースを予約でご案内しているほか(無料)、区内のイベント開催にあわせたイベントツアーなども行なっています。門前仲町にある「深川東京モダン館」では常にガイドが常駐していますし、土日は「富岡八幡宮」の境内にも待機して周辺エリアをガイドしています。

【江東 この街あの人】江東区文化観光ガイドの会 会長 岩渕 和恵さん 江東区門前仲町にある観光拠点「深川東京モダン館」の歴史を説明する岩渕さん。
江東区門前仲町にある観光拠点「深川東京モダン館」の歴史を説明する岩渕さん。

【江東 この街あの人】江東区文化観光ガイドの会 会長 岩渕 和恵さん 区内イベントにあわせて行なわれている「出張まちあるき案内所」。
区内イベントにあわせて行なわれている「出張まちあるき案内所」。

岩渕さんは歴史がお好きなんですか?

 私はこの会の前身となる江東区文化ボランティアガイドからはじめて、ガイド歴は17~18年ですが、江戸東京博物館の館内ボランティアも同じくらいやっています。
 もともと中世史に興味があって独学で勉強していたんです。江東区でガイドをするきっかけは、19年前に江東区に引っ越してきた時、江東区のことが知りたかったので、友人の勧めで教育委員会が主催する文化財保護推進講習会に参加しました。皆さんと一緒に勉強していくうちに、どんどん楽しくなってきてしまって。
 初級を経て中級に進むと論文も書くのですが、当時は江東区でもあまり知られていなかった三井親和(深川にゆかりのある江戸時代中期の書家)について、仲間と一緒に研究しました。この時の仲間とは自主研究グループ「江東区の歴史と文化を継承する会」を結成し、今でも年に一度は研究発表を続けています。

自分で調べた知識をガイドに活かして

歴史の知識はガイドをする上で役立っていますか?

 そうですね、お客様から「そんなの知らなかった」「来て良かった」とか、そういった言葉をいただくとやっぱりうれしいです。ガイド冥利につきますね。江東区は関東大震災と東京大空襲で二度も焼け野原になっているので、残っているのは石碑くらいなんです。だから、自分で調べたことが役立てばやりがいを感じます。
 先日ご案内した時に「ガイドさん、説明はすべてエピソードで話してくれない?」と、おっしゃったお客様がいたんですね。要するに私たちが苦慮しているのは、今の世の中、現場に行ってスマホで検索すればだいたいの概略は分かってしまいますから。そういった面では教科書には載っていないエピソードだけで、という要望も無理からぬところかなと。

すべてエピソードでガイドしたんですか?

 全部はさすがに無理でしたけど7割くらいは(笑)。
ガイドにはマニュアルはなく、話す内容も個人個人に任されているんですね。だから日々勉強は欠かせませんし、自分で調べたものでないと知識は身に付きません。勉強するほど知識を全部話したくなるものですが、私はなるべく重要な点にしぼって内容をスリム化しています。小難しくガイドするとお客様も飽きちゃうので。
 また、お客様の年齢層によってガイド内容を変えたり、臨機応変に対応しています。

渋沢栄一やパブリックアートの新コースを作りたい

江東区は深川・亀戸・臨海部と見どころが多いですね。すべてをカバーしているんですか?

 もちろんです、江東区全域ですから。江東区のエリアは大きく3つに分けられ、亀戸など伝承が多い城東エリア、小名木川を中心として江戸以降に発展した深川エリア、そして近未来を感じさせる臨海部ですよね。
 江東区全体の魅力を伝えられればいいのですが、やっぱり深川エリアや臨海部に注目が集まってしまいますね。魅力ある亀戸にもっと足を向けてもらうため、亀戸天神社の「梅まつり」にあわせてイベントツアーを企画したり、JR「亀戸駅」前で来訪客に「まちあるきツアー」のチラシを2~3千枚も配布したり、観光スポットのご案内などを定期的に行なっているんですが、まだまだですね。
 亀戸には歴史のある香取神社もありますし、亀戸天神社は四季折々花が楽しめます。旧中川は都内ではなかなか見られない自然豊かな景色で、ご案内するとリピーターで来てくださるお客様もいるほどです。

【江東 この街あの人】江東区文化観光ガイドの会 会長 岩渕 和恵さん JR亀戸駅では「まちあるきツアー」や観光スポットの案内を定期的に行なっている。
JR亀戸駅では「まちあるきツアー」や観光スポットの案内を定期的に行なっている。

臨海部で人気なのはやはり豊洲市場ですか?

 そうですね、予約制の無料ガイドの中には「豊洲臨海エリアコース」や「豊洲市場ご案内コース」があります。海のない地域からいらっしゃった方は、豊洲市場から眺める東京湾に「東京にこんな場所があったなんて」と驚きますし、街中を歩けば造船をはじめ戦後復興の重工業地だった頃の痕跡が残り、晴海ふ頭や豊洲ふ頭の歴史も一緒にご紹介しています。
 臨海部は広いので、これからは船上ガイドもしようと考えているんです。ガイドも世代交代をしていかねばならないので、若い人を中心に船上ガイドの養成もしていこうと思っています。江東区の河川には珍しい閘門もありますからね。

【江東 この街あの人】江東区文化観光ガイドの会 会長 岩渕 和恵さん 定番のガイドコースでも人気の豊洲市場。
定番のガイドコースでも人気の豊洲市場。

今後、注目していきたいスポットはありますか?

 2022年にJR京葉線「潮見駅」前に清水建設イノベーションセンターがオープンします。そこに、江東区永代にあった渋沢栄一の「旧渋沢邸」が移築先の青森県六戸町から帰ってくるんです。渋沢栄一は資本主義の父として有名ですが、江東区ゆかりの人物で深川区会議員まで務めています。2021年の大河ドラマの主人公であり新しいお札の顔ですから、これは見逃せません。区内には古い建物が少ないので、移築される明治時代の建物は歴史的にも観光的にも貴重な資源になると思うんです。移築が完了するまでに新たなコースを作ろうと、ガイドの会の企画担当者たちは一生懸命コースなどを考えています。
 また、区内にはパブリックアートと呼ばれる彫像や石像など「まちなかアート」が約80か所も点在しています。今までまったく手をつけてこなかったので、このガイドコースも作っていく予定です。
 先ほども言いましたが、今後もガイドを通して江東区の魅力をどんどん発信していきたいと思っています。魅力は探し出せば必ずありますから。
(2020年2月12日取材)

【江東 この街あの人】江東区文化観光ガイドの会 会長 岩渕 和恵さん 江東区永代2丁目にある「渋沢栄一宅跡」。2022年、江東区潮見に里帰りすることが決まった。
江東区永代2丁目にある「渋沢栄一宅跡」。2022年、江東区潮見に里帰りすることが決まった。

江東区文化観光ガイドの会 会長 岩渕 和恵さん
1948年生まれ、江東区在住。
2019年より江東区文化観光ガイドの会会長に就任。
この他、江戸東京博物館展示ガイドボランティア、江東区の歴史と文化を継承する会会員。

江東区文化観光ガイドの「まちあるきツアー」
https://koto-kanko.jp/guide/guideinfo/